リフォームとリノベーションの違いをインターネットで検索してみると、だいたい次のようなことが書いてあります。「リフォームは、元の状態に戻すこと。リノベーションは付加価値(新しい機能など)を付けて改修すること」。これを弊社の施工例のなかでも特にシンプルでわかりやすい例で考えてみようと思います。
こちらの例は、間取りの変更や新しい機能の付加はされていませんが、床や壁クロスの張り替えや、デザイン性のある照明器具の取り付けによって、見違えるように美しくおしゃれな部屋になっています。しかし、新しい価値や機能は加わっていないので、こちらはリフォームに区別されると思います。つまり、再び形を整えたものなので「Re Form(リ・フォーム)」。
次の例は、元々は和室の1DKだったものの間取りを変更し、キッチンカウンター付の洋室ワンルームに改修したものです。和から洋へ、閉め切られたキッチンスペースからオープンキッチンへと間取りや機能が変更されました。
ちなみに、元の部屋の写真はというと・・・
こんな感じでした。
和室とキッチンが壁と引き戸で仕切られています。ビフォーとアフターで写真の撮影位置が同じではないので少しわかりにくいですが、施工後は壁と引き戸が取り除かれ、キッチンが部屋に対してオープンになっているのがわかると思います。加えて、風呂・トイレ・洗面台が一体型となった「3点ユニット」と呼ばれる設備を解体し、水回り3点をそれぞれ独立させました。もしもこれをリフォームの発想で考えると、古くなった3点ユニットを新しい3点ユニットに入れ替える、というプランになったのではないでしょうか。美しく、おしゃれになったという点ではリフォームと同じですが、元の部屋とはまったく異なる部屋に生まれ変わっているので、これはリノベーションと呼べると思います。再び刷新し直したので「Re Innovation(リ・イノベーション)」。古い内装が新しくなったという部分ではなく、間取りや機能が変わったところに着目していだきたいと思います。
つなぐ不動産デザイン研究所では、「中古住宅を住みつないでいくために、次の住まい手の住まい方に合わせてリノベーションする」という提案を行っているので、どちらかといえばリノベーションという言葉をよく用います。けれど、リノベーションは住みつなぎのための手段であって、目的ではありません。中古住宅が次の住まい手の住まい方に最初から合っていれば、部分的にリフォームするだけで事足ります。たとえば、京都の長屋に住みたい、という方はきっと便利な最新設備に囲まれた暮らしよりも、もっとプリミティブな暮らしを望んでいるのではないでしょうか。そうすると、リノベーションで大改修するより、少し手直しする程度で収めたほうがずっといいと思うのです。そういう意味で当サイトにおいては、リフォームとリノベーションはどちらも歓迎する手段です。
その住まいで何をするか。家族の日常生活か、ひとりの日常生活か、第一拠点(本宅)か第二拠点(セカンドハウス)か、仕事をする場所か、あるいは生活と仕事を併用する場所か。家族やペットの部屋割り、家族がコミュニケーションするスペースとその導線、仕事や趣味のスペース、一戸建てなら庭や駐車スペースなどのエクステリア、見たい外側の景色、見せたくない内側の様子。まずはそれらをデザインすることが第一。リフォームで足りるものはリフォームで、間取りの変更や機能の追加を要するときはリノベーションで。そして最後に部材を選んでコーディネートする段階で、床の色や材質をどうするか、キッチンや浴室などの設備をどんな大きさのどんなスペックのものにするか、などと考えるのは、リフォームでもリノベーションでも同じように楽しく、それがまさに中古住宅を改装して住む楽しさ、醍醐味ですね。