昔々、陸路で長崎に向かう手前に最後の難所として峠がありました。それが日見峠。その周辺には宿場があった名残りだと思いますが、現在の地名は宿町となっており、その隣には界町があります。そして、このあたり一帯は日見地区と呼ばれています。日見といえば、長崎ペンギン水族館が有名です。市営団地があり、長崎総合科学大学もあることから、スーパーやコンビニなど商業施設も整っていて、海辺の町としてコンパクトにまとまっています。

　今回は、その日見エリアにある単身用マンション二世帯をつなげて、1LDKの部屋をつくりました。最近、ABC不動産リノベーション研究所が賃貸物件でよくチャレンジしているもので、二つの部屋を隣り合わせで横に繋げたり、上下に繋げてメゾネットタイプにしたりして、広い間取りをつくることでターゲットチェンジする方法です。現在、狭いワンルームは供給過多か需要減少、あるいはその両方によって空室が増えているからです。私たちはこのリノベーションを「GATTAI」と呼んでいます（そのまんま！）。

　社内でのたわいのない会話ですが、「つなげたいけれど、改装する予算がないときにはどうすれば良いか」というテーマを話していたとき、個人的な意見として「何も改装せず、電気・ガス・水道のメーターだけを一つにする」という究極のGATTAIを提案しました。すると、それだと隣の部屋に行くのに一度室外に出なくてはいけなくなるので、「せめて這ってでもいいから室内から隣部屋に行けるように、壁に小さなトンネルを開ける」というアイデアも出ました。トムとジェリーに出てくるジェリーの家のようでおもしろいなと思った。リノベーションはいきなり最大から引き算していくのではなく、最小から足し算で考えるとおもしろいアイデアが出るのかもしれません。

　今回のGATTAIはオールリフォームしているので、合体したことがわからないほどつくり込んであります。玄関には巨大なシューズクロークを設置し、まずはこれが目を引きます。キッチンは木製天板のオリジナルキッチン、それと一対になった木製のカウンターテーブル、天井にもベニヤ板を貼っており、さらにリビングルームの床にもアカシアの無垢材を使用しているので、全体的に木のイメージが強いナチュラルな感じに仕上がりました。リビングルームの壁には、ABC不動産リノベーション研究所がよく使うブリックタイル（見た目だけでなく質感もレンガ調）が木の雰囲気にマッチしています。

Before

1Kタイプの空室の部屋が隣り合わせで二つありました。洗濯機を外に置くタイプの狭い単身用の部屋で現在の人気は高くありません。

After

壁の一部を解体して2つの部屋をドッキング。片方の部屋の玄関ドアは解体し、壁で塞いでいます。

日見のドッキング・マンション

エリア｜長崎市界町
設計・施工｜ABC不動産
プランニング｜高島 知明
デザイン｜辻郷 麻理
施工時の築年数｜37年

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