香焼の海と古民家

 地図で見ると、尖った槍のように海に突き出た地形の野母崎半島。温泉と海水浴が楽しめる伊王島や砂浜が美しい高浜海水浴場など、長崎市内からいちばん近い夏のリゾート地です。半島西側の海岸線からは、あの世界遺産の端島(通称・軍艦島)を見ることもできます。半島の北部にはショッピングエリアとしてフレスポ深堀などの商業施設が充実する深堀町、そのお隣に香焼町があります。フィッシングやスキューバダイビングに訪れる人も多いところです。

 そんな香焼町に小さな漁港があります。とても静かな海で、のだかなところ。今回は、この漁港の近くの一戸建てをリノベーションしました。グーグルマップで測ってみると、現地から車で、フレスポ深堀まで6分、伊王島港まで8分、長崎駅までは29分。長崎市中心部へのバスや車での通勤も可能でありながら、静かな環境で過ごしたい人にはおすすめのエリアです。

 マンションでは、スケルトン状態(文字通り骨格を残してすべて解体した状態)からフルでリノベーションすることもあるのですが、一戸建ての場合にそれはもったいし、特に本物件では、元々の状態がとてもノスタルジックで壊すには忍びない。元の魅力を残しつつ、それに新しく変えるものを合わせていく。残すものと新しくするもの、新旧を違和感なくコーディネイトすることに神経を使いました。

 たとえば、手入れのいい庭に面したリビングルームには、元々マントルピースがあり、これをあえて残して、床や壁紙を張り替えました。木製の建具も既存のものを残し、昔懐かしいネジ締り錠が付いていたりして、古民家のような雰囲気に仕上がりました。窓外に広がる色とりどりの庭の景色を含めた全体の調和がうまくいったように思います。

 ダイニングキッチンには、新しく「小上がり」を設けました。最近は畳に座ることが不慣れな人が多いので、キッチンの横にあるからといって必ずしもここで食事をしなくても良いと思います。冬のコタツを楽しんだり、ゴロリと横になるスペースとして活用したいですね。リビングやダイニング、ベッドルームも色味として主にダークブラウンを使うことで新旧の調和がとることができました。

Before

昔ながらの間取りで和室が多い。1階の中央にはマントルピースのあるレトロモダンなリビングルームがありました。

After

間取りは大きくは変更していません。1階のキッチンの横にあった和室は一度解体し、4.5帖の小上がりをつくりました。水回りはすべて新調し、2階のすべての和室を洋室に変更。1階の和室は、広縁とそこから眺める庭の和の雰囲気が素敵で、あえて和室のまま残しています。

香焼の古民家

エリア|長崎市香焼町
設計・施工|ABC不動産
デザイン|辻郷 麻理
施工時の築年数|55年

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